Critical ReflectionとDEALモデル

先日の福島でのフィールドトリップを振り返る、という意味も含めて、本日はRuth先生によるCritical Reflectionに関する講義が行われました。Critical Reflectionという言葉は、日本語では「批判的思想」と訳されるようです。しかしここでのCriticalという言葉は必ずしも “否定的”という事ではなく、「客観的に問題を定義する、一般化せずに根拠を問う、検討を加え評価する」、といった意味合いで用いられています。また、Reflectionは「内省、省察、熟考、回想」といった意味合いを持ち、過去の出来事や自身の経験について振り返り考えることを指します。

Ruth先生は、学習においてこのCritical Reflectionが大切だということを強調しました。大学の授業でも、ただ講義に出席するだけでは、学ぶ事は出来ません。授業で聞いたこと、見たこと、感じたことを考えることで、「学ぶ」ことが出来ます。

今回、このCritical Reflectionを行っていく上で、Ruth先生は、DEAL Modelという方法を紹介してくださいました。

写真 Ruth先生の講義の様子

Figure.  DEAL Model for Critical Reflection (Ballesteros-Sola, Maria., “Service Learning: A Key Pedagogical Tool for Gaining a Deeper Understanding of Yunus Social Business”), retrived from https://www.researchgate.net/publication/319469739_Service_Learning_A_Key_Pedagogical_Tool_for_Gaining_a_Deeper_Understanding_of_Yunus_Social_Business?_sg=NpsQVCGWyrduvP4cKJ0ZHcDewWJ_cfzXSwiz956NCudPk1gpWfUPaBeSWM2Ga5dq5HK3-f5anMn1hfNPLtdtV0goJQ7iDvHwaQ

DEAL Modelは、文字通りDEALの頭文字で現わされる働きを用いた方法です。上の図にもありますが、DEALの
Dは、Describe (説明する)
Eは、Examine (調べる)
ALは、Articulate Learning (学習目的・意義を明確にする)
を指します。Ruth先生はこのDEALの指す3つの過程について、詳しく説明して下さいました。

Describe、つまり説明するという事は、客観的に、何が起こったか、何があったかを述べる事です。Ruth先生は、Critical Reflectionの中のこの過程について、分析することは必要なく、起こった出来事、状況を出来るだけ詳細に説明するよう学生達に伝えていました。

Examineの過程では、その説明された事に意味を割り当てていくのだそうです。Ruth先生は、出来事をどのように理解したのか、また今までの学習内容との関連性といった内容を含み、出来事についてよく分析するよう言っていました。「機械工学の学生として、~~と思った」のように、それぞれの専門分野、また立場から見える独自の観念を、この過程で考えていってほしいとRuth先生はおっしゃっていました。

Articulate Leaningは、上の2つ過程を通して考えた点を踏まえて、学習目的を改めて明確にする過程だと教わりました。この学習の価値を、今ある状況の中で、だけではなく、社会の中で、コミュニティの中で、ある目標の中で、、などの広い意味で、考慮していく必要があると、Ruth先生は述べていました。これについて、例えば「この学習は、サステイナビリティを達成していくにあたって重要」という文は、JSPSDの学習としては十分かもしれません。ですが、サステイナビリティに興味を持たない人々にも、この学習の価値が理解出来るよう、詳しく、丁寧に文章を考えていってほしい、とのことでした。

Ruth先生からは、本日の講義を受けて、福島のフィールドトリップに参加した学生はその経験について、参加していない学生は最近あった経験について、このDEAL Modelを用いてCritical Reflectionを行う、という課題が出されました。Ruth先生は、学生たちにこの課題を進める時間として、授業内に約30分ほどの時間をとってくださいました。この時間、Ruth先生は、個人個人の質問に答え、時には彼らの文章に対しアドバイスを与えていました。

ジョージア工科大学生達の一部からは、本日のwriting重視の授業当初、「まるで大学入学時に受講した英語の授業のようだ」と、あまり積極的でない様子も見受けられましが、Ruth先生の講義の後には、福島のフィールドトリップを振り返るにあたって、大切なReflectionだと理解したようでした。課題を進めるよう設けられた時間内には、多くの学生がRuth先生に質問をしコメントをいただいている様子が目立ちました。

東工大生も、授業当初は、具体的に何を書けば良いのか分からず、少し混乱しているようでしたが、最後に設けられた時間には、すでに少し完成した文章をRuth先生に読んでもらい、意見交換をしている様子も多く見受けられました。「なかなか、いい!」「その観点は、面白い!」といった先生のコメントに、学生達のやる気がさらに上がっているような印象を受けました。福島のフィールドトリップへ参加しなかった学生の多くは、その前のフィールドトリップで訪ねた広島について、Critical Reflectionを行おうとしている学生が多いようです。

その後、Ruth先生はProblem Discovery(問題発見)という課題も出しました。普段、”問題 (問題提議、研究テーマetc)” は、書籍や講義、個人の経験などから見つかります。しかし、聞こえる ”音” から、問題を発見するという方法もあります。この課題では、学生達は、彼らのよく知っている場所、または初めての場所で、聞こえた音について記録します。そして、それから分かるその場所・環境のサステイナビリティについて考えるよう、Ruth先生は伝えていました。

Critical Reflectionも、音によるProblem Discoveryも、面白いアプローチをとっています。学生達がどういった観点で福島のフィールドトリップを振り返るのか、どういった”音”を聞き、感じているのか、これらの発表を心待ちにしたいと思います。

 

講義の後は、キャップストーンのグループ及びトピック決めの時間となりました。キャップストーン(Capstone)とは、これまで積み上げてきた知識を基礎に、ある課題に対して実践的に取り組んでいくプロジェクトの事を指し、いわばJSPSD2018の集大成となります。昨年度のJSPSDでもキャップストーンはあったようですが、グループとトピックは先生方が割り当てたそうです。今年度のキャップストーンは、「それぞれが興味のある分野でやったら面白いのでは」というVince先生とRuth先生の意見を受け、グループにジョージア工科大学生と東工大生が最低一人ずついるという条件以外、自由にやってよいとのことでした。学生達はこれまでにトピックを考えているよう言われていましたが、実際にそれを他の学生と共有し、グループを作るという作業は、今回が初めてとなります。それぞれが、自らのアイデアを共有している様子が見受けられ、やりたい事が決まったグループは、グループの決まらない他の学生に対しプレゼンを行っていました。その様子はどこか、新入生を部活に勧誘しているような、そんな雰囲気がありました。

写真 グループ及びトピック決めの様子

終わり際には、「先生方に聞いてほしい!」と現時点のアイデアをプレゼンにくるグループがいくつかありました。今後、どういったトピックやアイデアがこのキャップストーンから生まれるのか、とても楽しみです。

写真 プレゼンに来たグループ

 

記録:庄司 (Kanaha Shoji)
2018年5月ジョージア工科大学、環境工学部を卒業。JSPSD2018を研究員として補佐。