エネルギー安全保障について

本日(2018年7月5日、木曜日)は、Woodall教授によるエネルギー安全保障(Energy Security)の講義が行われました。

「エネルギーとは物理学的な仕事に換算しうる容量(Capacity to work)である」、というエネルギーの定義を確認し、社会・経済におけるその重要性を産業革命やオイルショックといった出来事を通して学びました。


写真 講義の様子

その後、前回の授業でフラッキングについてよく知らないという学生がいたことを受けて、Woodall教授は、以下のビデオ(The Fracking Song)を紹介してくださいました。フラッキングとは、シェールガスの採取に用いられる手法で、地下の岩盤に超高圧の化学物質の含まれた水を注入し、亀裂を生じさせます。シェールガスといえば、ここ10年ほどでアメリカで採掘が進み、急激に生産量が増え、アメリカをエネルギー消費大国から輸出大国に変えようとしてる化石燃料です。しかし、その採取の過程で用いられる水に含まれた化学物質の環境への影響が明らかでない事や、今まで地震の起きたことのない場所で地震が起こる事など、フラッキングは環境面で懸念される点が多くあります。このビデオはフラッキングの仕組みと、エネルギーの必要性、環境問題をラップ調の歌でうまくまとめてあり、面白いなと思いました。


(参考 The Fracking Song: https://www.youtube.com/watch?v=timfvNgr_Q4)

その後、Woodall教授は、学生達を5人から6人のグループに分け、それぞれに以下の主要なエネルギー源の長所と短所を議論し、まとめるように指示しました。

主要なエネルギー源
・化石燃料(石炭、石油、天然ガス)
・水力発電
・再生可能エネルギー(風力発電、太陽光発電、地熱発電、バイオエネルギー)
・原子力発電


写真 グループワークの様子

話し合いの時間が設けられた後に、石炭の長所は1班が、短所は2班がといった具合に、それぞれ担当の班が、クラス全体に向けてグループで話し合った内容を発表しました。話し合われた論点の中では、運搬の利便性、安定性、有用性、供給力、コスト、適応性、そして環境への影響といった内容が共通して指摘されていました。他に、化石燃料に関しては独裁制などの接点が短所として挙げられました。

講義の後半は、エネルギー源についての話し合いの内容をもとに、エネルギー政策およびその関連主体についての講義がありました。以前の講義において解説のあった、グルーバル開発における政策主体についての授業で学んだ内容と関連させながら、いわゆる “ギャング・グリーン”と呼ばれるNGOの存在、そしてエネルギー関連のステークホルダーについて、Woodall教授は説明していました。

今週は、
ー月曜日から「エネルギー、環境、政策」の講義が始まり、
ー火曜日は、福島第一原子力発電所を訪ね、
ー水曜日は、福島でのフィールドトリップについてクラス全体で振り返り、
ー木曜日の今日は、エネルギーについて学ぶ、

といった一週間であり、エネルギー週間とも言える期間となりました。

月曜日に福島原発事故について議論した際(=福島を訪問する前日)、学生の一部は、「単に過去に起こった酷い事故」、といった位置付けで捉えられている印象を受けていました。それに対し、実際に福島原発を訪問した後、本日の議論及び発表においては、福島での事故は「どこにでも起こりうる事故」として捉えられ、今後、同じ過ちを繰り返さないためには何をしていくべきか考えていく事の重要性、が指摘されていました。何事もすべてを予測して、という事は出来ませんが、エネルギー政策において、あらゆるリスクの可能性をしっかりと検討していく事の必要性を改めて感じました。

 

記録:庄司 (Kanaha Shoji)
2018年5月ジョージア工科大学、環境工学部を卒業。JSPSD2018を研究員として補佐。