電解合成
プロトン伝導性固体電解質形燃料電池による電解合成
アンモニアは体積当たりの水素含有量が高く、かつ比較的高温低圧での液化が容易であることから、次世代の水素エネルギーキャリアとして有望視されています。現行のアンモニアの工業的合成法であるハーバー・ボッシュ法は窒素と水素を用いた高温高圧環境を必要とする反応であるため、より環境負荷の少ないアンモニア合成手法の開発が求められています。
その一つとして、プロトン伝導体を用いた電解合成法は、水、窒素、および電気エネルギーから(電気化学的に)直接アンモニアを合成する手法であり、よりクリーンなアンモニア合成手法として期待されています。
アノード反応: H₂O → 1/2O₂ + 2H+ + 2e-
カソード反応: N₂ + 6H+ + 6e- → 2NH₃
総括反応: 3H₂O + N₂ → 2NH₃ + 3/2O₂
本研究室では、500°C近傍で作動するプロトン伝導性セラミックスであるY-doped BaCeO3を電解質として用いたアンモニア電解合成セルを対象に、アンモニア生成速度の向上に向け、反応場となるカソード電極触媒の材料開発や微細構造制御を行っています。またアンモニア電解合成における反応機構は、未解明な点が多く残されていることから、反応メカニズム解明にも注力しています。
本研究に関連する実験装置
アンモニア電解合成装置
反応装置は対向する2本の石英ガラス管によって電解合成セルを挟んだ構成となっており、アノード側から加湿した水素を供給しカソード側から窒素を供給する構造となっています。
多重反射ガスセル
反応機構検証のために、重水素を用いて電解合成を行った際の反応生成物の同位体分析を行っています。フーリエ変換赤外分光装置に光路長8 mの多重反射ガスセルを搭載し、生成した微量同位体アンモニアを検出します。
FT-IR 反応追跡装置
アンモニア生成反応においては強固な窒素三重結合の解離反応が律速となっている可能性を踏まえ、ガラス製閉鎖循環反応器内に電解セルを導入し、電極触媒に電位を印加した状態で触媒上の吸着窒素分子に由来する赤外線吸収ピークを観測し、電極電位と窒素の結合強度の相関を明らかにすることを目指している。