Our Research

ケミカルループ法

化学ループ法における酸素キャリア材料の開発と水素製造プロセス

 化学ループ法(Chemical-looping combustion; CL法)は、金属酸化物の酸化還元反応をそれぞれ異なる反応器で進行させることで、水素、二酸化炭素や窒素を、各反応器出口から分離した状態で得るとともに,熱回収も同時に行うことが可能なシステムです。CL法のシステムは還元塔と酸化塔の2つの塔からなり、それぞれの塔での反応は以下のとおりです。
 
(還元塔)CmHn + (2m+1/2n) MO → 2m M + H₂O + CO₂ + 吸熱
(酸化塔)M + 1/2 O₂ → MO + 発熱
  
 通常の燃料の燃焼反応とは異なり、酸素源に金属酸化物中の格子酸素を用いて、燃料の燃焼と熱回収を行うエネルギー変換システムであり、この反応によって、低品位の熱を用いて還元反応を起こし、酸化反応によって高品位の熱を生成することができます。さらに、還元塔に水蒸気を導入することにより、水素を生成することも可能です。このように、CL法は様々な応用の可能性を持つ環境調和型エネルギーシステムとして近年注目されています。
 CL法においては酸素キャリアである金属酸化物の活性や耐久性が、効率や寿命を決定づける因子となるため、本研究室では酸化還元繰り返し反応に対し、高活性・高安定性を示す粒子の開発を行っています。また、先述の基礎的な粒子特性評価と並行して、流動層を用いた化学ループ法の反応試験にも取り組んでいます。合成したキャリア粒子を流動層反応容器内で流動状態にし、種々の条件下における反応生成ガスの定量分析や速度論解析を実施することで、反応機構の解明と高効率システムの開発を進めています。
 

   
図 金属酸化物の酸化還元を用いたエネルギー変換・貯蔵技術 (二塔式(左),三塔式(右))

 

図 金属酸化物の酸化還元を用いたエネルギー変換・貯蔵技術 (アプリケーションへの応用)

 
 また、メタンの熱分解による水素生成や、二酸化炭素利用を目的としたキャリア粒子の開発にも着手しています。本研究室では、メタンの熱分解による水素製造と、メタンの分解反応後に粒子表面に析出する炭素と二酸化炭素との反応による一酸化炭素の合成を異なる反応器で進行させるシステムを検討しています。
 

本研究に関連する実験装置

化学ループ評価装置

 上述のキャリア粒子の開発や基礎的な粒子特性の評価と並行して、流動層を用いた化学ループ法の反応試験に取り組んでいます。
 

 
図 化学ループ評価装置(実験中)
 

キャリア粒子を詰めた反応流動層

 化学ループ法に用いられる金属酸化物粒子としてはイルメナイト(FeTiO₃)などの天然鉱物が代表に挙げられます。天然鉱物はコスト面での優位性があるものの、表面積が小さく反応性が低いことから、酸化還元を行う金属酸化物と担体とを複合化した、より高性能な人工粒子の開発が求められています。以下は、Al₂O₃担体-Fe₂O₃担持の人工粒子のSEM画像です。
 

 
図 Fe-Al₂O₃人工粒子
 
図 キャリア粒子を詰めた流動層反応器