フィールドワーク:世田谷清掃工場と世田谷区資源循環センター

2017/07/27 Thursday

本日の全体の流れ:
本日は、世田谷区にある世田谷清掃工場と世田谷区資源循環センターでのフィールドワークでした。ごみ処理とガラスびんの資源化について処理施設の内部を見学しながら学びました。

フィールドワーク:
本日は、世田谷区にある世田谷清掃工場と世田谷区資源循環センターにてフィールドワークを行いました。用賀駅にて集合し、皆で施設へ向かいました。

世田谷清掃工場
まず、世田谷清掃工場に向かいました。説明と施設内の案内をしてくださったのは、若泉さんでした。世田谷清掃工場は東京二十三区清掃一部事務組合という、一般廃棄物の中間処理を担当する特別地方公共団体によって運営されています。

まず、若泉さんによって施設の基本的な説明がなされました。この清掃工場は一般廃棄物のなかでも可燃ごみの処理を担当しており、可燃ごみを一日に300㌧燃やすことができるそうです。この工場の目的は大きく三つあります。一つ目は、町をきれいにすることです。家庭から出るごみを回収して、町をきれいに保つという目的があります。二つ目は、ごみを小さくすることです。可燃ごみは焼却することによって容積が約20分の1に減少します。三つ目は、ごみを焼却した時に出る熱エネルギーから電気などのエネルギーを得ることです。目的の説明の後は、パンフレットに掲載されている上空からの写真で、東京都23区の埋立処分場の場所を確認しました。現在埋立が行われている処分場は23区最後の埋立処分場であるため、ごみをできるだけ減らし小さくすることが求められているとのことでした。

続いて、世田谷清掃工場についてのビデオを見ました。燃えるごみの焼却を行っているのがこの世田谷清掃工場であり、埋立は東京都が管理していることが示されました。ごみ収集車がごみを回収して工場に入ると、車両ごとにごみの重さを計ります。その後ごみバンカにごみを貯め、クレーンでかき混ぜて均等に燃えやすくした後、焼却炉へ投入します。焼却炉は800℃で24時間稼働しています。高温で燃やすことで、ダイオキシンなどの有害物質の発生を抑えることができるそうです。焼却されたごみは灰になり、元の20分の1の大きさになります。灰は1200℃以上の高温で熱するとさらに小さくなり、砂状のスラグになります。スラグはアスファルトの原料などとして有効利用されるそうです。燃えないごみは小さく粉砕し、鉄を回収した後埋立処分場に埋められます。大きなごみは可燃と不燃を分け、15㎝以下に破砕して鉄を回収した後可燃ごみは焼却、不燃ごみは埋立処分場で埋められます。焼却にともなう熱エネルギーは熱として、または電力として利用されます。最後に、3R(Reduce, Reuse, Recycle)が推奨されました。ごみを減らし、まだ使用できるものは活用し、分別してリサイクルをしましょうとのことでした。

ビデオを見終わった後には、スラグの実物を見せてくださいました。世田谷清掃工場では、焼却炉にて灰をそのままスラグにできるほど高温で焼却しているそうです。

続いて、施設内を見学しました。まず初めに、焼却炉に引っかかって取り出された金属ごみの実物を見ながら、説明を受けました。生徒からは、どうやってこれらの金属ごみを取り出したのかという質問が上がりました。若泉さんによると、ごみが機械に引っかかったときには機械を止め、熱が冷めるまで待ってから手作業でそれらの金属ごみを取り出すそうです。焼却炉は大変高温の為、冷めるまでには一日ほど待つ必要があるそうです。金属ごみはしばしば絡まって取り出せない為、その場合は溶接機で焼き切ってから人手で取り出すとのことでした。可燃ごみの中に可燃ではないごみが混ざってしまうと、機械を止める必要が生じるなど大変手間がかかり、それらのごみが集まると大きくなって故障にもつながります。したがって、ごみはきちんと分別してほしいということでした。

次に、ごみの収集車が到着するプラットホームを窓越しに見学しました。プラットホームにはごみを貯めるごみバンカにつながる扉が五つあり、見学をした際には収集車が一つ止まっていました。ごみバンカにつながる扉は車が来たら自動で開くそうで、その都度開け閉めを繰り返すことで悪臭が外に漏れ出ないようにしています。見学をした際に来ていた車の小ささにジョージア工科大学の生徒たちは驚いており、収集車の小ささに関係する質問がいくつか出ました。小さいトラックで頻繁に出入りを繰り返すのか、という質問が生徒からなされました。若泉さんによると、小さいトラックは一日に10往復し、大きいトラックは一日に4往復するそうです。阿部先生によると、道が狭いこともあり、小さいトラックを利用しているようです。

その後、6階に移動しました。6階の窓からはスカイツリーも見え非常に見晴らしが良く、生徒たちも喜んでいました。若泉さんは、窓から見える茶色い屋根が世田谷美術館であり、この美術館にはこの工場から蒸気を送って暖房や冷房に使用していると教えてくださいました。

続いて、ごみバンカを見学しました。ごみバンカでは見学時2000㌧のごみが貯められていました。ごみバンカは非常に深く作られており、上から見ると少し怖いくらいでした。通常はコンピューター管理だそうですが、今回は特別に手動で動かして見せてくださいました。大型のごみクレーンがごみを持ち上げて落とすことでごみを攪拌し、それによってごみの燃えやすさが均等になるようにしているとのことでした。ごみクレーンがごみを持ち上げ、下に落とす作業は非常に迫力があり、生徒たちもその度に歓声を上げて盛り上がっていました。ごみクレーンで一度につかめるごみの量は、3トンだそうです。ごみを落とすと軽いごみが舞い上がり、壮観でした。ごみを焼却炉に運ぶ作業は、一時間に4回ほど行われているそうです。クレーンは2つあり、交代で稼働しているとのことでした。

最後に、中央制御室を見学しました。中央制御室では、複数のモニターとコンピューターを使って工場内を監視しており、24時間体制で動いているそうです。制御室で使用する電気量と、焼却によって発生する熱エネルギーのバランスはどうなっているのか、という質問をしている生徒がいました。若泉さんによるとエネルギーの量は両者でだいたい同じくらいですが、エネルギーが余れば電力会社へ売っているそうです。

世田谷区資源循環センター:リセタ
続いて、世田谷区資源循環センターリセタへと向かいました。リセタでは、施設に関するビデオを見たのち、窓越しに工場内を見学しました。説明はセンターの吉田さんがしてくださいました。

まず、リセタについての基本的な情報についてビデオを見て学びました。ビデオではガラスびんのアニメーションの「びんの助」が説明をしていました。リセタでは、ごみを減らす為に資源であるガラスびんを選別、資源化しています。ビデオでは地球温暖化などの環境問題にも言及し、ごみを減らさなければ資源が枯渇するのに加えて地球自体も存続できなくなる可能性があると指摘していました。このビデオでも3Rがキーワードとして挙げられていました。ちなみに、「びんの助」も家庭から出たガラスびんを再使用してできているそうです。続いて、リセタでのガラスびんの処理の流れを学びました。リセタでは、回収されたガラスびんがコンテナごと搬入され、コンベヤに乗せて手作業でビールびん等のリターナブルびんを抜き取っています。リターナブルびんとは、繰り返し使うことができるガラスびんのことです。その後リサイクルされるワンウェイびんは反転機でひっくり返されて取り出され、整列機でまっすぐに整列させられます。続いて色自動選別機にかけられ、無色、茶色、その他の色に分けられます。最後にガラスびんの色が間違っていないかを人の目で確認したのち、破砕機で砕いて貯留ホッパで一時貯留し、適宜搬出します。無色と茶色のガラスびんは再びガラスびんにリサイクルされます。その他の色のガラスびんは細かく破砕した後再商品化事業者に引き渡され、道路などの土木工事資材等として再使用するそうです。ビデオの最後には「びんの助」からの三つのお願いがありました。びんごみを出す際、まずはキャップを取ること、続いて軽く洗うこと、最後にガラス製のお皿はリサイクルできないので不燃ごみとして出すことがびんの助のお願いでした。

ビデオの後は、窓越しに工場内を見学しました。見学できたのは、3階の作業行程でした。吉田さんによると、1階ではコンテナからリターナブルびんを取り出す作業が行われているそうです。世田谷区には約90万人の住人がいますが、その全ての家庭から出されるガラスびんがリセタへ運ばれてくるということでした。コンテナの中にはしばしば不燃ごみなど不適切なごみが混入しているそうで、それらは全て手作業で取り除かれているそうです。特に多いのは、不燃ごみであるガラス製のお皿や、ジャムが中に残った状態のジャムのビンなどだそうです。1階で選別すると、毎日コンテナ40箱ほどの不適切なごみが集まるそうです。加えて、リターナブルびんは毎日2500本ほど取り出しているとのことでした。

3階には、リサイクルされるワンウェイびんのみが流れてきます。3階には色自動選別機があり、カメラでガラスびんを撮影してその色を無色、茶色、その他の色に選別しています。選別後には、人の目で色に間違いが無いか最終確認が行われます。手作業ではキャップの取り外しも行っているそうです。小さいガラスびんや割れたガラスびんは色自動選別機では色を選別できない為、手作業で色の選別を行うとのことでした。見学室の壁の向こう側には破砕機があり、破砕刃が付いた2つのドラムは内側に回り、ガラスびんを破砕してカレット(破砕されたガラスびん)にしているそうです。リセタでは行っていませんが、カレットになった後は道路の中央分離帯の防草対策等に活用されているそうです。

最後に、生徒たちから質問が寄せられました。破砕したガラスびんは、その後どのように再利用されるのかという質問が上がりました。無色と茶色のガラスびんは、ガラスびんにリサイクルされますが、その他の色のびんはその他の用途に再利用されます。リセタから再商品化事業者に引き渡した後、砂状に粉砕され、その保水、排水効果を生かして土木工事資材として活用されているようです。その他の色のびんは、基本的に色が問題にならないものへとリサイクルされるそうです。全てのガラスびんをリターナブルびんにしたほうが良いのではないか、という質問もありました。吉田さんによると、リターナブルびんは大手のメーカーによって大量に市場に出回っていれば、回収し再使用することで環境負荷の低減等の効果が生まれるそうです。しかし、現状としてはメーカーも多数存在し、かつガラスびんの種類も多数あるため回収をする利点がメーカーには無い場合が多いとのことでした。したがって、現在ではカレットにして、再利用する流れがあるとのことです。また、リターナブルびんは途中で傷がつく可能性もあり、現在の消費者は商品の傷にも敏感なため、リターナブルびんを使用することが難しくなっている現状もあるようです。阿部先生によると、びんのデザインも他商品と差異化をする為に多種多様になってきているそうで、リターナブルにびんにしても再使用が難しいとのことでした。

今回のフィールドワークでは普段なかなか見ることができない、しかしごみの減量に必要不可欠な資源の処理について学びました。現場で働く人々のお話しを聞いて、生徒たちも何か気づきがあったことと思います。