本日の前半は、中間テストが行われました。テスト範囲は、Kennedy教授とWatkins教授による講義内容でした。ほとんどの学生が、時間ギリギリまで問題に取り組んでいました。中間テストの後は、テスト後は、Newstetter先生による「日本人の思考」に関する授業がありました。
Newstetter先生の講義では、日本人の考え方・理性(価値観)についてのディスカッションが行われました。そのために、外国人の目線から議論を行うためにGT生のみで構成されるペア(2人組)があらかじめ決められ、日本人の思考を理解する一助となる課題が指定されていました。本日は、3つのGT学生ペアが、事前に与えられた課題について説明を行い、フロアに質問を投げかけ、そして意見交換を促す役割を果たしました。討論では、GT生も東工大生も、共に積極的に参加している様子が見受けられました。
写真 ディスカッションの様子
今日のディスカッショントピックの紹介とコメント
「武士道」 について
現在の生活内でも、武士道から来ているものはあるか?日本人の価値観、行動、と武士道はどう繋がっているのか?グローバリゼーションの中での日本の特有性と武士道の関係とは?日本文化と西洋文化との違いは、武士道とどう関係があるか?などの質問が挙げられ、これらについて、皆で話し合いました。
ある生徒は、日本のマナーについて、アメリカやヨーロッパのコティオン(Cotillion:舞踏会) と相違点を述べていました。
ペアからの質問のいくつかには切腹についてのコメントがありました。切腹は、敵に倒させることを恥とし、そうした状況になったことへの責任を自ら判断し、自分自身で処置する事を意味します。このように覚悟を示すことで名誉を保つ社会的意味がありました。アメリカからの視点としては、切腹が行われていた、またそれが名誉な行為であったという事が驚きであったようです。日本で自殺が多いのも、家族や社会からの責任をとるという意味では、何か通じる事があるのでは、という見解もありました。
東工大生からの意見では、現在、武士道が生きている例として、記者会見で社長が頭を下げる点(社内の責任を社長がとり、社会を前に責任を取ってお詫びする様子)や、ブラック企業という言葉にも象徴されるように、「空気を読む」必要が常にあり、個人の能力よりも周りからの評判が大切な点などが挙げられました。
「沈黙」 について
アメリカでは、何でも口に出すことが大切という文化がありますが、日本では、よくしゃべる事は、必ずしも良い事とはとらえられません。あるGT生は、日本に来てからすでに、会話中にある沈黙に何度かぎこちなさを感じていると述べました。これに対し、沈黙によるぎこちなさは、日本人でも感じることがありますが、アメリカでは個人として沈黙に耐えられなく、ぎこちなさを感じるのに対し、日本ではグループとして何を発言していいのか分からないという事にぎこちなさが生まれるのではという見解がありました。
ある学生は、漫画の主人公は、大抵よくしゃべる性格を持っている事が多いという事を指摘していました。
また、この沈黙という言葉は、ただ黙り込むこと以外にも多くのことを意味します。Newstetter先生は、これに関連して、ハイコンテクストとローコンテクストについて紹介していました。日本はハイコンテクスト文化を持っているが、アメリカはローコンテクスト文化を持っています。その他、ヨーロッパや他のアジア諸国なども例に、それぞれハイコンテクストとローコンテクストの意味も、デスカッションを通して考えました。また、Newstetter先生は空虚(Emptiness)についても、「沈黙」との関連を含め、コメントを残していました。例として、生け花を挙げ、海外のフラワーアレンジメントとの違いとしては、たくさんの空間がある、それを美と捉える事などを述べていました。
最後の1時間ほどは、今日あったディスカッションのトピックに触れながらの、Newstetter先生による講義でした。「私が講義をしない理由。。。そして、講義のない授業で何をするべきか」と書かれたスライドで授業が始まり、学習のプロセス、教育の方法について学び、共に考えていきました。
写真 スライド “Why I don’t lecture….And what you should do if that is the primary classroom mode.”
主に、フィールドトリップ前の授業でもあったBrofenbrenner’s ecological systems theory 、ICAPで象徴される4つの対話方式(Interactive, Constructivem Active, Passive)、そして知の4状態 (4 possible states of knowing)について、学習しました。
写真 知の4状態 (4 possible states of knowing)
DKDK (Don’t know you don’t know)
KDK (know that you don’t know)
KK (know that you know)
DKK (Don’T know you know)
最後にこれらの延長線として、様々な国の家庭内の、また社会の中での教育についてみていきました。Newstetter先生は、日本ではお馴染みのテレビ番組「はじめてのおつかい」を授業で流しました。その中で2歳と5歳の兄弟が二人きりで買い物に出かける様子を目の当たりにしたGT生は、「こんな小さな子供を、大人なしに外に出すなんて」と、驚きの声を上げていました。この「はじめてのおつかい」の中で、お店の人がレジで、子供にお金の数え方を教えてあげている様子や、ご褒美にお菓子をあげている様子など、近所の人皆が、子供の成長を見守っている様子が映されていました。他人(stranger)には気をつけるよう教育するアメリカとの違いが現れていたようです。また、このJSPSDのグループは、日本、アメリカのみならず、様々なバックグラウンドの学生が集まっています。モンゴルやタイ、インドネシア、パキスタン出身の学生は、彼らの国での教育に関する習慣や考え方を共有しました。
講義中もNewstetter先生は、生徒に多くの質問を問いかけ、それぞれが個人で考える時間、意見共有の場を作っていました。私自身、改めて、自分がどれだけ世の中のあらゆることを知らないのか、考えたことのない視点があるのか、同時に今持っている自分の価値観・理性などはどこから来ているのかなど、様々なことに気づき、考える、良い機会となりました。
また、ジョージア工科大学(GT)のVince Pedicino先生が日本に到着しました。(Vince Pedicino先生について:https://inta.gatech.edu/people/person/vince-pedicino) 今日は、Pedicino先生による講義はありませんが、共に講義に参加してくださいました。
記録:庄司 (Kanaha Shoji)
2018年5月ジョージア工科大学、環境工学部を卒業。JSPSD2018を研究員として補佐。