Value-Focused Thinkingについて

2017年6月21日(水曜日)

本日の全体の流れ:
本日は、前半はKennedy先生によって持続可能な開発について考える際のValue-focused thinkingについて講義がありました。タイトルは、Features of Value-Focused Thinking & Infrastructure Developmentでした。特にインフラ整備において具体的にどのようにプロジェクトを発案し決定するのかという点が焦点でした。後半は、東京のプロジェクトについてグループワークをしました。

Kennedy先生の講義:
本日の前半はKennedy先生による、持続可能な開発について考える時のひとつの在り方、Value-Focused Thinkingについてのレクチャーでした。まず、value, つまり「価値」とは何であるかという定義の確認がなされました。Valueとは、「意思決定と評価において使用される原則」のことであると定義されました。Value が強く関係するものとして、倫理、判断基準、ガイドライン、ポリシー、法律などが挙げられました。倫理とは何か、という問いには、何が良いことか、悪いことかという感覚のことであると定義されました。その「感覚」は基本的に人によって異なるということが示されました。しばしば組織はEthical Codeを持ち、例えばアメリカのCivil Engineerの組織の倫理コードは、「持続可能性」を重視することが決められているそうです。Value-tradeoffについても言及されました。Values-tradeoffとは、異なるValue間で一方を犠牲にしても一方を重視するという状況であり、例えばアパートを探すとき、家賃が安ければバス停から遠くてもそのアパートを借りるという状況のことを指します。持続可能な開発を実現するための計画を立てる時、Valueは大切になるということでした。

具体的なプランを立てる時の過程についても学びました。アメリカのTransportation Planning Frameworkが例として挙げられました。まず、今からどうなりたいのかというVisionを設定します。その際、一般の人々もその決定に含むことが重要であり、そのためには交通機関を使用する人々、特に学生などに調査を行う必要があるということでした。それはEquityを実現することでもあり、とくに一般の人々が使う交通機関のプランニングにはそれを使う人々への意識調査が必要になるということです。Visionの後はGoal, Objectiveを設定します。Goalはより抽象的な最終的な目標であり、Objectiveとはより具体的な目標のことを指します。そしてパフォーマンスを図る基準を設定し、データを集めて分析します。分析の後、具体的なプロジェクトに取りかかり、それを評価します。その評価結果を反映させてポリシーや研究に還元し、その後さらに長期、短期の計画を立ててまた評価を繰り返します。

Keeneyの議論が紹介され、Value-Focused Thinking と Alternative-Focused Thinkingの各々の長所や短所について見ていきました。KeeneyによるとValue-Focused thinkingとは、創造的な思考方法のことであり、何かをさらに発展させるためにはその出発点に必ずしも「問題」は必要ないという立場をとります。Value-Focused Thinkingではまず何をしたいのかを決め、どのようにそれを達成するかを探ります。このとき既存の選択肢に囚われる必要はなく、例えばスイスのゴッダルド・ベース・トンネルのようにまったく新しい解決策にたどり着く可能性があります。持続的で深い思考を必要とし、より長いスパンで結果の影響を考えるという長所があるとのことでした。一方で、Alternative-Focused Thinkingでは既存の選択肢の中から最善を選ぶという過程を経る為、より深く持続的な思考に欠け、早く明らかにうまくいきそうな選択肢を選択する傾向があるとのことでした。

講義の後、三つのビデオを見ました。ゴッダルド・ベース・トンネル、ミヨー橋、オーレスン・リンクについてのビデオでした。それぞれその技術的革新性やプロジェクトの重視したもの、Valueについてよく分かる内容となっていました。ゴッダルド・ベース・トンネルについてのビデオは、トンネルを作る技術に特に注目したものであり、いかにこのトンネルが過去の技術を生かしつつ、新しい機械を導入して安全性を確保するなど革新的であるかが示されました。Kennedy先生も、このビデオからは問題解決の際には技術の革新、イノベーションがとても大切であることを学んでほしいということでした。特に、19世紀イギリスの技術者が開発した、Ship Wormという船に穴をあける生物の構造を真似た機械の構造など、分野に限られない柔軟な思考が注目に値するとのことでした。ミヨー橋のビデオでは、この橋が「美しさ」をそのValueとして重視したことが注目されました。周囲の環境に調和するようにデザインされた橋であり、それによって環境と観光に良い影響があったということです。機能に限らず、それを超えたValueを目指すことの創造性が強調されました。オーレスン・リンクについてのビデオでは、その技術的側面と環境保護への重点が置かれていることへ注目しました。加えて、この橋の特徴はそのプロジェクトの出発点が「問題」ではなく、デンマークとスウェーデンの相互の利益を生み出す為という目標にあったことにあり、Valueに注目した思考だといえます。デンマークには良い職があり、スウェーデンには安い物件があり、それらをつなぐ橋を作ることで相互に経済的に良い影響を生み出そうというのがプロジェクトの出発点であり目標であったようです。オーレスン・リンクの建設では、予想しなかった影響が発生したとのことでした。海底に建てられた柱には海洋生物が生息するようになったようです。さらに、デンマークとスウェーデンの文化が融合して新しい文化が作られているようです。
Kennedy先生は作業員への危険について考える必要があるといいます。建設の際の危険もさることながらその後のメンテナンスをする際の危険もあり、安全性や持続性を考える上でも重要です。インフラ整備において、機能だけではなく社会への広く持続的な影響について考え、取り組むことが求められているということでした。複合的な視点が必要であるということですね。


グループワーク:東京グループ
後半は、東京を対象としたプロジェクトについてのグループワークでした。あるグループでは、エネルギー、Language Accessability、ごみ、交通機関の四つに問題を絞り、それらについてさらに詳しく調査をすることが必要であると確認していました。月曜日にレポートを書き始めるとして、それまでに調査とプレゼンテーションへの準備をすることで合意しました。プレゼンテーションにおいてビデオを使用することも発案され、Woodall先生も15分のなかに収まるのであれば良いというお答えでした。それぞれ四つのテーマが広すぎるので、絞ってケーススタディをするか、それぞれについて一般的な議論をするのかどうか、という点も挙げられました。基本的な事項について少し話した後は、それぞれが自分の作業に取り組んでいました。
今回のグループワークは早く終わるグループもあり、比較的さくさくと作業が進む感じでした。