幼児教育と持続可能性

持続可能性及び環境・自然について、教育のどの段階から学ぶことができるのでしょうか。幼児教育について考えてみると、日本の保育・幼児教育は公的支出が0.5%以下(2013年)と国際的に見ても低く、幼児教育における公的支出はOECD32か国中最低となっています。人口が集中する都市部の幼稚園では、子供たちが自然に触れる機会も少なく、環境問題や持続可能性について教える機会が十分にあるとはいえない状況になっています。

教育への公的支出が多い北欧のなかでも、スウェーデンでは幼児教育において持続可能性、とくに環境の持続可能性を大切なテーマとして取り上げています。就学前学校はフォスコーラ(FÖRSKOLA)と呼ばれ、保育を生涯学習のスタートと位置付けているようです。国が定めた就学前学校カリキュラムが存在し、どの就学前学校でも同じ水準の教育が行われるように配慮されています。その就学前学校カリキュラムには、環境問題や自然保護問題を重視するように記載されており、子供たちが自然な環境の中で遊びなどの活動をすることが推奨されています。

スウェーデンの就学前教育では、「森のムッレ教室」活動など野外活動に力を入れるところも多く、子供たちは雨でも雪のなかでも外で活動をするそうです。その大きな目的としては、皆で話し合い行動することで民主主義社会を、豊かな自然に触れることで自然環境に配慮した持続可能な社会を担う子供を育てることにあるようです。日本の人々に聞いても、幼児の野外活動が民主主義と持続可能性の実現に繋がっていると答える人は少ないと思います。幼児教育への理解と、自然環境保護、持続可能性への意識の違いが分かる事例であるように見えます。

『沈黙の春』(1962)で有名なレイチェル・カーソンは、『センス・オブ・ワンダー』(1991)において、姪の息子ロジャーと雨の日も森を歩きまわります。泥がつくとか、服が汚れるとかそういったことは気にせずに、子供が自分で自然を感じることの大切さが描かれています。今の忙しい日本で、これだけの豊かな時間の過ごし方を子供に許せる環境があり得るでしょうか。

日本には美しい森林、渓流、海など豊かな自然が残されており、それらを未来を担う子供たちに託していく教育が、もっと重視されても良いのかもしれません。持続可能性を実現するには、幼児教育の在り方について考える必要もあるようです。