アメリカにおけるエネルギー・環境政策と生徒へのインタビュー

2017/07/17 Monday

本日の全体の流れ:

本日の前半はWoodall先生によるレクチャーでした。タイトルは、Energy Security & Environmental Protection in the United Statesでした。アメリカにおけるエネルギー・環境政策を簡潔に概観しました。その後生徒たちの書くレポートについての指導があり、後半は東京とアトランタにおけるエネルギー問題を考えるグループワークでした。

 

本日の講義:

本日の前半では、Woodall先生によるアメリカのエネルギー・環境政策についてのレクチャーがありました。今回のレクチャーでは、アメリカにおけるエネルギー・環境政策を巡る基本的な情報を簡潔に学びました。まずは、アメリカでは気候変動について懐疑的な視点があることが示されました。政党においても分断があり、民主党は気候変動を認めていますが、共和党は懐疑的であるそうです。アメリカの国家としての在り方として、Liberal Capitalistと位置付けられ、個人の所有権や競争が重視されることを復習しました。アメリカにおいては、社会、市場、国家のうち市場の役割が大きいそうです。これらのアメリカの特徴は、アダム・スミスによる「神の見えざる手」に基づく市場原理とそれに基づく「小さい政府」の推進が根底にあるそうです。スミスの考えによれば、「小さい政府」の役割は国防、国内の正義、公的組織の運営の三つに限定されるそうです。アメリカの在り方には、Rational Choice Theoryも関わっており、この理論によれば個人は自己の利益を最大化するように行動するという前提が設定されています。

続いて、アメリカにおけるエネルギー・環境政策の進展を4つのステージに分けて見ていきました。ステージ以前の状況として、西部開拓が示され、そこには西部開拓による「未開」社会の「文明化」が神からの使命として理解されていたことが指摘されました。ステージ1(1849-1945)では、未開拓の地「フロンティア」が消滅したという意識が生じ、環境保護の初期の動きとしてイエローストーン国立公園が認定され、それに付随してNational Park Serviceも発生しました。エネルギー源としては石炭への依存が高かったとのことです。アメリカの森林面積は日本の国土の2倍にもなり、特に西部に多いようです。この時代には、環境の現状を保つ「保全」が始まったといえます。

ステージ2(1946-1969)では、環境保護への意識が社会で高まったことが指摘されました。大規模な環境破壊が発生したのもこの時期であり、レイチェル・カーソン著『沈黙の春』(1962)が話題になり、ベトナム戦争によって発生した反戦運動も加わって環境問題への意識が高まったといいます。

ステージ3(1970-1991)では、環境問題の分岐点が訪れます。アメリカでEarth DayやEnvironment Protection Agencyが設置され、ストックホルム条約が締結されました。環境問題への具体的な取り組みとして様々な政策やActが実施された年代でもありました。

ステージ4(1992-現在)では、京都議定書やパリ協定が成立したりリオプラス20が開催されたりするなど環境問題に対処する国際的な動きは活発になっています。しかし一方で、アメリカ国内の環境問題への取り組みは後退しているとのことでした。ブッシュ大統領の京都議定書の拒否とリオ+20への不参加や、トランプ大統領のパリ協定への否定的な態度などが挙げられ、基本的にここ20年間のアメリカ合衆国連邦政府は環境問題について消極的であり続けていると指摘されました。

続いて、Woodall先生によるレポートの書き方についてのアドバイスがありました。Woodall先生はこれまでのレポートは非常に良くできていたと総評されました。そのうえで、さらにステップアップしてほしいとのことでした。レポートの構成について指導がありました。まず、表紙をつくるようにアドバイスがありました。表紙にはタイトル、名前、レポートの目的、日付、ロゴなど基本情報を載せるようにとのことでした。特にタイトルは読者を惹きつけるために重要であるとのことでした。表紙の次には要約を付けるように指示がありました。注目する問題、主要な論点、主な発見などについて簡潔にまとめることが求められています。続いて序論です。序論では、特に主要な論点について読者にヒントを与えることが重要であるとのことでした。このレポートがどのようなことを論じるのかについて読者に概要を分かってもらうことが必要だとの指摘でした。読者を論点へとスムーズに案内するためのヒントが必要とされています。本論では、サブの見出しを付けてレポートを分かりやすく構成するようにとのことでした。特に、今回も数人のグループで一つのレポートを執筆するため、レポートを一つにまとめることが勧められました。レポートの全体の流れと論点がバラバラにならないように、編集が重要であるとのことでした。Woodall先生は、レポートでは’Knowledge of Mankind’への貢献を示すことが目的の一つであると言われました。特に、今回のプロジェクトは初めての試みであり、レポートの「価値」を証明することができるのではないかということでした。

 

グループワークと生徒へのインタビュー:

グループワークでは、東京とアトランタにおけるエネルギー問題に取り組むPolicy Brief提出に向けて個人個人の担当個所を仕上げていく作業が行われました。生徒たちは、各々パソコンに向かい自分の作業をしていました。

今回は、東京工業大学からプログラムに参加している生徒二人に少しお話を伺いました。 二人のグループは今日の個人作業に加えて、後でカフェで集まってみんなで話し合いをするそうです。お二人によると、ジョージア工科大学と東京工業大学の生徒たちは一緒にいろんなところへ行っているそうです。先週は京都に行った人が多かったそうで、その他にも富士山、ディズニーランド、日光、奥多摩、横浜、原宿、鎌倉などに行ったようです。授業外においても、生徒たちの交流が盛んであることが分かります。お二人がこのプログラムに参加した理由を聞いてみました。お一人は、アメリカの友人が欲しいことや英語をもっと学びたいことを理由として話してくれました。もう一人の方は、英語では言いたいことをなかなか言えないと感じており、英語で話す機会が欲しかったこと、そしてこのプロジェクトのテーマが自分の分野に近く、授業に参加できると考えたからと教えてくれました。両者とも英語の能力を伸ばしたいという動機があったようです。ジョージア工科大学の生徒たちの東京工科大学の生徒たちとの違いについては、発言の多さを挙げていました。特に、ジョージア工科大学の生徒たちは講義中もグループワークのときもたくさん発言をしており、自分の考えがしっかりとあり、視野も広い感じがするとのことでした。確かに講義、グループワーク問わず発言の数は多いように思われます。その他気付いたこととしては、ジョージア工科大学の生徒のタフさを挙げていました。一緒に旅行に行っても、彼らはたくさん歩き、かつ楽しそうとのことでした。お二人とも、確かに外国に来たらただ町を歩いているだけでも楽しいよね、と言っていました。お二人とも大学院入試が控えており、バイトとこの授業の両立などなかなか多忙なようですが、このプログラムからたくさん得るものがあることを期待します。