複数の基準がある状況での意思決定について

2017年6月20日(火曜日)

本日の流れ:

本日の前半は、Kennedy先生の講義でした。様々な判断基準と重要度がある中で、いかに最良の意思決定をするのかについて具体的な方法を学びました。後半は大垣を対象としたプロジェクトについてのグループワークでした。

 

Kennedy先生のご講義:

本日の講義のタイトルは、“Multiple Criteria Decision Making” でした。本日は、様々な異なる単位で計られるデータと、それぞれに対するWeight、つまり重要性の大きさを考慮して、いかにそれぞれの問題を比べ、どのように意思決定をするのかという具体的な方法について学びました。まずは、比較する基準は多数あるということが確認されました。例としてアパートを探す状況が挙げられ、生徒たちから集まった判断基準は、駅からの距離、家賃、どれくらい綺麗か、安全性、周囲の環境など様々でした。Kennedy先生はまず基準はこのように多様であることを確認し、加えてそれらの間には人によって重要度の違いがあるということを指摘されました。まず、コミュニティや個人によって様々な基準があり、それらの重要度はそれぞれのコミュニティや個人によってさらに異なるということが確認されました。それを踏まえたうえで、いかにして最良の決定をするのかというのが今回の課題でした。インフラについて考えると、従来は費用対利益という単純な考え方が主流でしたが、現在では「利益」をどのようにして図るのかということの困難さが重要な点になっているようです。特にインフラ投資の影響は長いスパンで考える必要があり、単純にその「利益」を計算することは難しいことが示されました。基準とその重要度はステークホルダーによって異なるため、それをまとめて最良の意思決定をするにはどうするのか、が今回の重要なテーマです。

インフラ整備の場合よく考えられる基準として、そのシステムのパフォーマンス、ネガティブな影響を最小にすること、システムの持続性、などが挙げられました。インフラ整備の場合は、経済的な利益率はあまり考慮には入れないとのことでした。これらの複数の基準間のバランスを取ることで、持続可能性を生み出す必要があるとのご指摘でした。

複数の基準がある意思決定には、それらを比較可能なUtility、効用と呼ばれる数値にまとめて考察するというMultiattribute Utility Theoryがあることを学びました。この理論は、それぞれの基準において消費者の満足感をUtility functionとして単位を離れて数値化することで、基準間の比較を可能にし、より最良の意思決定を可能にするというものです。まず、複数の選択肢と何を基準とするかを決めます。その後それらの基準の重要度をそれぞれ決め、100%の中で割り当てます(Weight)。それぞれの基準のデータを単位からはずして0から1の数値にし、1が最良であるように数値を出します(Scale)。その数値をそれぞれの重要度とかけて、Utilityを数値で算出します。このUtilityを比べることによって複数の選択肢から最良の選択肢を数値によって選択することができるようになります。

具体的には、その基準がBenefit Attribute かCost Attributeかによって、基準のデータの単位の外し方が異なります。Benefit Attributeとは、例えば家賃の払い込みの猶予期間など、基本的に数値が大きくなればなるほど満足感が高まるものを指します。Cost Attributeとは、例えば環境汚染など、基本的に数値が大きくなればなるほど満足感が低下するものを指します。したがって、複数の選択肢の中で最良の数値はBenefit Attributeの場合最高値、Cost Attributeの場合最低値となります。それぞれを0から1になるにつれて満足感が高まるように数値化する為に、Benefit Attributeの場合は分母に最高値、分子にその選択肢の数値を割り当てます。Cost Attributeの場合は分母にその選択肢の数値、分子に最低値を割り当てます。Overall Utility scoreは、U = w1u1 + w2u2 + w3u3 + … + wnun(w=weight, u=utility score)と求められます。

基本的な計算方法を学んだあとは、最良のアパートと最良の原子力発電所建設地を数値から導き出すエクササイズをしました。アパートAからNまでの14の選択肢が挙げられ、その中からトップ5の優良アパートを計算から導き出しました。生徒たちはエクセルを使用して、皆すみやかに計算をしていました。アパート選びの基準として、家賃($)、バス停までの距離(ft)、家賃滞納可能期間(days)が挙げられました。それぞれのUtility score を物件ごとに数値化し、その数値を物件間で比較することで最もUtilityが高いアパートを特定する作業でした。このように異なる単位のついた複数の基準間の数値を標準化して選択肢ごとにまとめ、それらを比較することで、複数の基準とそれぞれ異なる重要度がある場合でも最良の意思決定ができるようになるということがよく分かるエクササイズでした。

グループワーク:

本日のグループワークは、大垣のプロジェクトについてそれぞれが担当する箇所についての資料やデータを収集しました。それぞれがパソコンに向かって自分の作業をし、必要があれば他のメンバーと相談をしていました。

あるグループでは、Policy Briefを序論、社会セクションの問題とレコメンデーション、環境セクションの問題とレコメンデーション、経済セクションの問題とレコメンデーション、このプロジェクトの欠点と結論、という構成にすることが確認されました。基本的には、大垣と似たような問題を抱えた同じような規模の他の市と大垣を比較、分析する質的分析を採用するようでした。特に、大垣と似た状況にある市がどのような対策を行ったのか、その結果と影響はどのようなものであったのかを見て、大垣におけるプロジェクトに反映させていくという方針です。しかし、量的なデータを用いてより実証的にしたほうが良いのではないか、という意見もメンバーから出ました。その意見に対しては、質的な分析に必ずしも数値化されたデータが有効であるわけではないという意見がなされました。生徒たちは授業外にも集まって作業をしているようで、熱心にプロジェクトに取り組んでいることがよく分かります。アメリカの学生と日本の学生が共同で作業をすることで、お互いに様々なことを学んでいることが感じられました。