新しいプロジェクトー東京とアトランタ

2017/ 07 /03, Monday

本日の全体の流れ:

本日の授業の前半は、Woodall先生によるレクチャー、タイトルは“Energy, Environment, and Sustainable Development” でした。前半の最後には新しい課題とグループの発表がありました。

 

本日の講義:

本日の講義前半は、Woodall先生によるレクチャーでした。レクチャーの前に、先生から生徒が6月に提出したレポートとプレゼンテーションについてフィードバックがありました。レポートについては、全体的に非常に良く書けていたとの総評でした。しかしながら、イントロダクションの書き方と文法やスペルなどに間違いが多かったというご指摘でした。加えて、今回は6、7人のグループで一つのレポートにまとめた為、レポートの全体としてのまとまりに欠ける傾向があったということです。いずれにしても、執筆後の編集、推敲が必要であるということでした。パワーポイントについては、全体的に良かったとのことですが、7月からの新しいグループで行うプレゼンテーションについては前回よりもステップアップできるように頑張ろうとのお言葉でした。

講義の内容は、理論の復習とエネルギー問題についてどのように考えるのかという基本的な枠組みについてでした。まず、Development、つまり「開発」という概念の発展について復習しました。1950年代から80年代にかけて、「開発」とはすなわち経済的な側面にのみ焦点が当てられていたということです。しかし、80年代に入ると「開発」の概念も変化し、経済的な面に加えて環境面も含めるようになります。2000年代までには、Amartya SenがFreedom、人々の「自由」が開発のエネルギーであると指摘したように、経済、環境に加えて社会的な側面も開発の概念に盛り込まれることとなりました。ここで、本日講義を聞きに来られていたJenny先生から、開発について考える際のSocial Equity、社会的な「公平さ」に注目する重要性が指摘されました。阿部先生からも、日本におけるDevelopment概念の変化について、経済的な面にのみ注目した「発展」から、より複合的な概念である「開発」へと変化を遂げていることが加えられました。

エネルギーについて、Woodall先生は「エネルギーの経済的選択」、「環境への影響」、「社会での受容」の三つの要素が絡まっていると指摘されました。特にエネルギーに関わる問題は、社会で受け入れられるかどうかという点が重要であるとのことでした。例えば、原子力発電所のような多くの人々にとって身近には建っていて欲しくないものをいったいどこに建てるのか、という局面では社会での受容が必要になってきます。続いて、持続可能ではないエネルギーのコストにはどのようなものがあるのか、生徒たちと一緒に考えていきました。まず、エネルギーは再生可能か、そうではないかの二種類に大別できます。そのどちらについても、長所と短所を挙げていきました。まずは、化石燃料を使用するような再生不可能なエネルギーについて、その長所と短所を生徒たちと一緒に考えました。まずその長所として、効率が良いこと、安価であること、インフラ整備がすでに整っていること、輸出できることなどが挙げられました。短所については、大気汚染、消費するばかりであること、有害物質の放出、資源がある国でないと実現できないことなどが挙げられました。次に、再生可能エネルギーの長所と短所について考えていきました。再生可能エネルギーの長所は、再生可能であること、ごみが少ないことが挙げられました。短所としては、高価であること、技術的にニーズに生産が追い付かないこと、生産量が少ないことが挙げられました。続いて、原子力発電の長所と短所について考えました。長所として、効率的、安価であること、安定して生産できること、クリーンであることが挙げられました。短所としては、自然災害におけるリスクが高いこと、汚染物質をどのように処理するのかが決まっていないこと、設備が高価であること、発電所がテロのターゲットにもなり得ることが挙げられました。これら一連の考察から分かることは、どのエネルギーを選択しても、多くの良い、もしくは悪い「結果」が生じるということでした。エネルギーにまつわるコストはしばしば予測不可能であるため、例えば公害や国家間の争いなどにもつながることが指摘されました。

続いて、持続可能な開発について考える際の理論的枠組みについての復習をしました。「なぜ」国家間の貧富の差が存在するのか、について答える際の5つの理論を復習しました。まず、「合理的選択理論」では全ての人々が自分の利益を最大にするように合理的に判断し行動するという前提があります。しかし、Woodall先生は、そもそも合理的とはどういう意味なのかについての定義が不十分であることや、人間がいつも合理的な行動をとるわけではないことを指摘されました。The Tragedy of the Commons、「コモンズの悲劇」についても言及され、多数の人間が自らの利益を最優先し合理的に共有資源を乱用すれば、資源は枯渇してしまうという問題があることが示されました。二つ目の理論は、World System Theoryであり、この理論では国家間の貧富の差の原因を豊かな国による貧しい国の搾取に求めます。三つ目の理論は、Cultural Explanation、つまり文化や思想の違いによって現状を説明する理論です。例えば、この理論に従えば、その社会が豊かであればあるほど、生産可能なGreen energyを選択するという説明ができます。その社会における理念や思想の違いが、実際のエネルギー選択に影響するという考え方です。四つ目の理論は、Modernization & Development Theoryであり、W.W.Bosrowは組織を、’Interacting Organism’と定義していることが示されました。この理論では社会を一連のシステムであると捉え、それが臓器のように働くと考えます。5つ目の理論は、Institutional Theoryです。Douglass Northは組織を、’Rules of the game’と捉えており、法律から文化に至るまで全てを組織として捉え、あらゆる意思決定はこの組織単位でなされると指摘したことが示されました。人々の行動を定義するのも、エネルギー選択を行うのも、組織が重要な要素であるということです。これらの理論は、生徒たちがエネルギーについて考える際の指標として示されています。

最後には、今月の授業のGeneral Questionが示されました。 今回のお題は、「経済的開発とグリーンエネルギーの推進は両立可能なのか?」です。現在の一般的な見解としては、経済的に豊かになることと、green energyを推進することは両立し得ないというものが一般的であるとのことでした。今回考察する都市は、アトランタと東京の二つです。この両者を同時に考える上で、行政レベルの違いや、災害の結果の違いなどの点に留意するように指示がありました。今回も先月と同じように、Policy Brief、プレゼンテーション、最終レポートという三つの課題が課せられました。前半の授業の最後では、新しいグループのメンバーが発表されました。新しい課題に新しい仲間と取り組むことで、生徒たちの得るものが多いことを期待します。今月も楽しみですね。