最終プレゼンテーション:ついにJSPSD最終日!

2017/08/03 Thursday

 

本日の全体の流れ:
前半は東京工業大学と周辺コミュニティの開発を考えるプロジェクトのプレゼンテーション発表、後半は東京とアトランタにおけるエネルギー・環境政策についてのプロジェクトのプレゼンテーション発表でした。本日(8月3日、木曜日)は10週間にわたり実施してきたJSPSD最後の授業となります。

プレゼンテーションについて:

今回のプレゼンテーションはこれまでの課題とは少し異なり、Creativeであることが目標の一つでした。生徒たちは、街を実際に歩いて写真、映像を撮り、街の人々に声をかけてインタビューをし、参与観察をし、自分たちの足で一次資料を集めることから始めました。それらの資料を自分たちで整理、分析をして発表内容を組み立て、伝えたい内容を効果的に提示するために自分たちで撮った映像と写真を加工、編集し、長い時間をかけてプレゼンテーションづくりに取り組みました。

プレゼンテーションでは、どのグループも生徒一人ひとりに役割を分担して準備をしてきました。プレゼンテーションの直前まで、生徒たちは自分が発表する部分の練習をしていました。前日の二日間はプレゼンテーションの準備に充てられていましたが、生徒たちはそれでも直前までグループで、個人で、発表の準備をしていました。

今回のプレゼンテーションは、JSPSDの最終的な成果を見せる場でもあり、生徒たちも本当に真剣に取り組んできました。生徒たちの気合も感じられ、会場は程よい緊張感に包まれていました。

東京工業大学と周辺コミュニティ Global Development Capstone:

最初にWoodall先生から始めの挨拶があり、どのグループもプレゼンテーションの最初に内容の要約を述べることが求められました。

最初のグループは、北千束エリアの担当でした。
タイトルは、Kita-Senzoku’s Road to Successでした。このグループでは、東京工業大学とコミュニティとの結びつきをどのように築くのか、をテーマにして提案を行いました。調査手法として、参与観察、グーグルマップを使った調査、セミストラクチャーインタビュー、紙面でのインタビューが挙げられました。これらの調査から分かったことは、全体的にコミュニティの人々は東京工業大学との関わりをあまり持っていないということだそうです。この結果を受けて、このグループではSTAR(The STAR Community Rating System)の内6つをキーカテゴリーとして取り上げ、東京工業大学とコミュニティを繋ぐ提案を行いました。提案は4つあり、東京工業大学がコミュニティに向けてワークショップを開くこと、コミュニティにテクノロジーセンターをつくり、そこで東京工業大学の生徒などが住民にレクチャーを行うこと、ネット上にコミュニティのニュースレターを作ること、公園とグリーンスペースを再設計することが推奨されました。ワークショップとテクノロジーセンターでは、東京工業大学の生徒や教授などがコミュニティの人々に役立つ知識を伝えることが提案されました。ネット上のニュースレターでは、イベントなどの最新の情報を提供し、どの人にも使いやすくするアイデアが提示されました。公園とグリーンスペースの再設計では、東京工業大学の技術と知識を生かしてどの人も楽しめる美しい空間にすることが提案されました。
これらの提案は、広告のような自作のビデオでテンポよく紹介されました。とても凝ったビデオで、それぞれの提案の後には(仮想の)電話番号やメールアドレスも表示され、「ご連絡を!」というアナウンスもついていました。ビデオの中で、工ミュニティ、(Community)という造語が表示されていたのが印象的でした。東京工業大学とコミュニティのつながりを表現した面白い造語ですね。

二番目のグループは、大岡山エリアの担当でした。
タイトルは、Tokyo Tech & Ookayama Co-Creating a Lasting Partnershipでした。このグループでは、東京工業大学の生徒へのアンケートを取り上げ、東京工業大学の生徒があまり大岡山商店街の本屋や商店を利用しないこと、そして知らないことを提示しました。そこで、このグループでは東京工業大学とコミュニティとの関わりをつくる為には組織レベルでの改変が必要であると提案しました。3つの提案がなされました。まず1つ目は、コミュニティに東京工業大学でのイベントについて最新の情報を提供することが挙げられました。大学でイベントがある際には、フライヤーを掲示板に貼ったり、ネット上の情報を常に最新のものにしたりすることで、コミュニティの人々に興味を持ってもらうことが提案されました。さらに、コミュニティのグループや施設などの組織とも連携し、イベントがあれば住民からフィードバックをもらって改善していくアイデアもありました。2つ目の提案は、東京工業大学にある活用されていない貯水池を活用することです。周りを囲っているフェンスを外し、ベンチを置いて、蚊などが発生しないように噴水を設置するなどして、コミュニティに開放することが提案されました。3つ目の提案は、大学正門の板張り遊歩道を地域のレストランと協力して活用することです。大学のボードウォークで地域のレストランに弁当やテイクアウトの商品を販売してもらうことで、生徒は普段遠くて行けないお店の料理が食べられ、レストランは商品を売ることができるという効果が見込めます。
このグループではカメラを胸の高さに掲げて歩きながら撮影した、歩いている人の視点から見える大岡山のビデオを撮り、そののところどころで発表内容が書かれた静止画面が映される凝った造りのビデオを活用していました。このグループではいかにしてコミュニティと大学の分断を乗り越えるか、が追求されました。

三番目のグループは、緑が丘エリアの担当でした。
タイトルは、Tokyo Tech and Midorigaokaでした。まず、このエリアにおける問題として、特に目立った不満は無いが、東京工業大学とのつながりが不足していると住民が感じていることが指摘されました。そこで、その問題点について扱ったドキュメンタリー風のビデオ(生徒作)を見ました。ビデオでは、学園祭である工大祭や地域のイベントに大学の生徒が参加していることなどを挙げ、コミュニティと大学との繋がりが実際にあることを示した上で、なぜ住民は大学とのつながりを弱いと感じているのか、より両者の繋がりを強化するにはどうしたらよいかを考えました。そこで、2つの戦略が提示されました。まずは、コミュニティの資源に対する生徒のアクセスを増やすこと、2つ目に相互の繋がりを強化して同じ目標に向かって協力するような関係を築くことが提案されました。これらの戦略を実現するために、生徒がコミュニティの住宅に滞在するホームステイが提案されました。国外から来た生徒はホームシックやどこで食材を買うのかといった生活上の問題を抱えることが多くあります。一方で、高齢者は外に出るきっかけも少なくなり、特に若い人との交流が希薄になります。そこで、高齢者の家に生徒がホームステイをすることで、生徒はコミュニティの情報が得られ、高齢者は若い人との交流ができ、お互いに支えあえるのではないかということでした。
その他の提案として、大学がコミュニティと連携して地域を対象とした研究や都市開発などの研究に実証的に取り組むことが可能になると指摘されました。また、大学が地域の小学校や中学校を対象として教育活動に参加することも提案されました。地域の産業とつながることで、建設業などでの生徒のインターンシップを通して、生徒と企業がお互いの知識と技術を実際に生かす提案もなされました。大学の知識と技術を生かして地域のグリーンスペースや公園などを美化することも可能になるとのことでした。大学とコミュニティが関係を深めることで、相互に得られるものがたくさんあることが分かりました。

四番目のグループは、南千束エリアの担当でした。
タイトルは、Separation of School and Stateでした。このグループでも、問題として大学とコミュニティのつながりがあまり無いことが挙げられました。提案を考えるにあたって、Jenny先生のレクチャーで学んだ、「社会、自然、技術」の三者を考慮する枠組みを使用していました。「社会」ではホームステイ・プログラムが、「自然」ではグリーンスペースの設置が、「技術」ではコミュニティにおける研究者のパートナーシップが提案されました。このグループが作成したビデオでは、東京工業大学の生徒とコミュニティ住人へのインタビューが、ポジティブな意見とネガティブな意見に分けて紹介されました。住民の意見として、大学の生徒が南千束エリアに来ることは少なく、ビジネスも下火との意見が示されました。洗足池があることもあり、コミュニティの好きなところとして雰囲気の良さや自然の多さが挙げられたそうです。ホームステイ・プログラムを実行すれば、滞在する生徒も自然を楽しめるし、受け入れ側の高齢者も交流によって元気がでることが見込めると示されました。また、洗足池以外にグリーンスペースが少ないことが挙げられ、いつも空いている駐車場などを利用してグリーンスペースを設置することが提案されました。野菜の栽培などをすることで、地域の小、中学校と共同で活動ができるのではないかとのことでした。地域には主に高齢者が中心となったグループが多数存在し、例えばハイキング・グループやバードウォッチング・グループなどがあるそうです。これらのグループと共同する可能性はあると示されました。コミュニティに在住の研究者に登録してもらい、地域のグループや高齢者も一緒に研究に参加したり協力したりすることで技術的なメリットが見込めるという提案がなされました。こうすることで、コミュニティにも大学にも得るものがあるということですね。
発表の後には、生徒からホームステイをするのは国外から来た生徒だけなのかという質問が上がりました。国外から来日した生徒が主な対象ではあるが、国内でも東京都以外から来た生徒などの参加も可能だとの回答でした。阿部先生から、駐車場の緑地化は実際に可能なのかという質問がありました。生徒は、確かに地主との交渉などの課題はあるが、特に大田区は緑地化に興味があるようなので、機会はあるはずだと回答していました。

 

東京とアトランタにおけるエネルギー・環境政策:
短い休憩をはさんだ後、後半は東京とアトランタにおけるエネルギー・環境政策について考えるプロジェクトのプレゼンテーションが行われました。

最初のグループのタイトルは、Securing a Future in Energy Securityでした。このグループでは、Energy Securityにまつわる4つのAを枠組みとして考察しました。4つのAとは、Availability, Accessibility, Affordability, Acceptabilityです。まずは、アトランタと東京のエネルギー環境について評価していました。東京とアトランタは共に、AvailabilityとAcceptabilityが低く、AccessibilityとAffordabilityは高いという評価になっていました。アトランタでは、天然ガス、石油、石炭などの化石燃料の使用量が多く、加えてパイプラインと港のみがエネルギーを輸入する手段であることからEnergy Security上の脆弱さが指摘されました。アトランタへの提案として、現在アトランタが取り組んでいるSOLSMARTという太陽光発電の推進プロジェクトを進めること、さらに沖合の資源を活用すること、加えて州外からの資源の輸入を利用することが挙げられました。エネルギー資源の入手方法を多様化するということですね。東京においては、同じくエネルギー資源の多様化が提案されました。特に、風力発電と地熱発電が東京都では実現する可能性が高いようです。風力発電では、タービンの音やサイズ、見た目を改善して都市の環境になじませることが提案されました。地熱発電においては、日本では公共の公園を利用することへの規制が緩和されつつあるとのことで、将来的に設備を増やすことが可能になるかもしれません。このグループでは、主にエネルギー資源の多様化を推進することが提案されました。

2つ目のグループのタイトルは、A Tale of Two Cities: Tokyo and Atlantaでした。イントロダクションでは、両方の都市の違いに注目して考察することが示されました。まず、両都市のステークホルダーについて見ていきました。東京では、東京都が力のある自立したステークホルダーとして挙げられました。特に、小池都知事は、自身が率いる都民ファーストの会が都議会の第1党になったこともあり、影響力の強さが指摘されました。その他には、東京電力が挙げられました。東京の現在の政策状況として、2020年までにスマートエネルギー都市を目指すことを掲げており、したがって太陽光発電や電気自動車、コジェネレーションシステムの導入などエネルギー政策にも力を入れていることが分かります。東京都への提案として、地熱発電、太陽光発電などの新しい技術、再生可能エネルギーの導入が挙げられました。スマートエネルギー都市の構想として、震災時の影響を考えてエネルギーの脱中心化が提案されました。
アトランタのステークホルダーの状況としては、ジョージア州知事とアトランタ市長の対立が指摘されました。州知事は気候変動に懐疑的な立場であり、一方で市長は持続可能な再生エネルギーの導入に積極的だそうです。両者に加えて、ジョージア電力とアトランタのコミュニティもステークホルダーとして挙げられました。アトランタでは、Climate Action Planを実行するなどの取り組みは見られますが、エネルギーの消費量は合衆国内でも比較的多く、特に交通機関での消費量が一番多いそうです。アトランタへの提案として、行政の一貫した統治と市の自治権の拡大が提案されました。さらに、交通機関システムの改変と産業とのパートナーシップが提案されました。東京都の交通機関システムからアトランタは学ぶことができ、東京都もアトランタの太陽光発電での取り組みなどから学ぶことができるということでした。
プレゼンテーションの後は質問がありました。阿部先生は、ステークホルダーに両者で違いがみられるかと質問されました。両都市の類似点は、電力会社がお互いに一社独占であることであり、相違点は、東京は東京都の権限が強いのに対して、アトランタでは市よりも州のほうが強い権限を有することであるとの回答でした。Woodall先生は、ステークホルダーとして電力会社以外の民間企業が挙げられていないことを指摘されました。先生によると、東京都では民間企業もエネルギーのコストには敏感だそうです。

3つ目のグループのタイトルは、AT & T Methods of Rationalityでした。このグループでは合理的な結果として、アトランタではエネルギーの供給に焦点が当てられ、東京ではエネルギーの需要に焦点が当てられていると指摘しました。ジョージア州はアメリカ合衆国の中でも8番目にエネルギー消費量が多い州であり、特に交通機関と商業での消費が多いそうです。アトランタでは1人あたりの車の使用量が合衆国でもトップクラスだそうです。車を利用する人が多いことから温室効果ガスの排出も問題であるとのことでした。そこで、交通機関を改善し、車の使用を減少させることが提案されました。さらに、商業活動でのエネルギーの消費量を減らすには、東京都で行った民間企業への働きかけが参考になるとのことでした。
東京では、東京電力が0.1%の再生可能エネルギーしか生産していないことが指摘されました。そこで、人々にエネルギーについて意識を高めてもらうことが提案されました。そのためには、エネルギー使用量が目に見えたほうがよいことが指摘され、Home-Energy Management Systemを導入して家の中で使用しているエネルギー量を住民自らが把握して管理することが提案されました。その他には、石油などの化石燃料だけではない代わりのエネルギー資源や革新的なエネルギーを導入することが提案されました。

4つ目のグループのタイトルは、eRAT Examining Renewables in Atlanta and Tokyoでした。このグループでは、東京とアトランタを比較したのち、太陽光発電と政府と民間企業の繋がりを提案しました。アトランタでは、Power to Change 2017という政策も掲げられ、エネルギーの効率化が図られているそうです。東京では、1970年代ごろから原子力発電の利用が始まり、東日本大震災の後は石油への依存が高まっているそうです。アトランタでは、交通渋滞と公共交通機関の不足、加えて州と市などの行政の連携が取れていないことが問題として挙げられました。既存のインフラ施設では、台風や洪水などの自然災害にも弱いということでした。公共交通機関の利用を促進するために、電車をより安くして利用しやすくすることが提案されました。また、アトランタでは行政の在り方が込み入っているため、エネルギー政策において管理と運営をするパートナーシップを構築することが提案されました。
東京では、大地震が予想されており、自然災害への対策が必要不可欠であるとのことでした。実際に東日本大震災では公共交通機関の停止で多くの人が帰宅困難になり、福島第一原子力発電所の事故によって電気の供給量が減りました。東京では、エネルギーへの強い依存と、人口の多さとそれによってコストが跳ね上がるインフラ整備の問題が指摘できるそうです。そこで、家庭でできるエネルギー対策として太陽光発電の利用が挙げられました。アトランタは太陽光発電の導入では進んだ都市であるので、アトランタから学べるものがあるとのことでした。ビジネスでの改善として、ソーラーパネルをビルの上に設置したり、オフィスの窓をソーラーパネルにしたりすることが提案されました。東京はアトランタの太陽光発電導入の経験について、アトランタは東京の公共交通機関の技術について学ぶことができると指摘されました。

以上で、JSPSDの全ての日程が終了しました。今回のプレゼンテーションでは、皆それぞれ独創的なビデオを作ったり、新しい提案をしたりと、生徒たちの努力と成長が感じられる内容となっていました。

プレゼンテーション終了後に、生徒たちと先生たち皆で写真を撮りました(発表会に参加くださった水本副学長および教育革新センターの松澤センター長もご一緒です。お忙しい中、誠にありがとうございました。)。皆さん、お疲れ様でした。

プレゼンテーションの後は、フェアウェルパーティを催しました。生徒も先生たちも集まって、皆で食事をしながら楽しみました。

東京工業大学の学生には、Woodall先生とジョージア工科大学の学生より、終了証書と記念品が贈られました。

今回のプログラムでは、ジョージア工科大学の生徒と東京工業大学の生徒が一緒になってフィールドワークや課題に取り組むことを通じ、大学、国籍、専門分野の垣根を越えて親しい関係を築いていました。

サマープログラムということで、毎週4日間の集中的な授業と課題に取り組んできました。ちなみに、いまさらですが、「サマープログラム」が意味するところは、GT学生にとって夏季休暇中に実施されるプログラムということです。JSPSDの実施期間10週間は、東工大の学生にとっては、概ね第二クォーターに該当する期間でした。毎週レクチャーを準備してこられた先生方の熱意に感謝をするとともに、毎週真剣にかつ楽しく学んできた生徒たちの努力に敬服します。生徒たちにとっても、JSPSDは素晴らしい経験であったことと確信します。

皆さん、本当にお疲れ様でした。